取材中の質問の展開の仕方

「これまでのご経験の中で、特に印象に残っているエピソードを教えてください」

 

医師への取材でこのように質問させて頂くことがよくあります。すっと話が出てくる人も多いのですが、「うーん」と固まってしまう人もいらっしゃいます。そして、先日は「失敗したり嫌だったエピソードは山ほどあるんだけど、話しにくいし。うまくいったことは、ほっとして忘れてしまう」というようなことをおっしゃられました。

 

病院紹介という媒体の性質上、医師の失敗事例を取り上げるのは憚りますし、ご本人も口を閉ざされます。仮にお聞きできたとしても、記事にできるかどうかは慎重な検討を要します。記事にならないかもしれない内容にじっくり時間を割くこともできず、先日はその話題は切り上げることにしました。

 

誰でも失敗や嫌な体験は思い出したくないし、話したくないものですよね。それ以降、マイナスの体験談などが出てきたときは、質問の仕方を工夫しています。

 

「その中で課題に感じていることは何ですか?」「どんなことにひっかかりを感じられでたのですか?」「どうやって乗り越えられたのですか?」

 

 失敗や嫌だった体験から、課題を見つけたり改善しようと考えたりすることは多いです。ですから、課題やひっかかりをお聞きすることで、その人の体験に基づく、その人ならではの価値観や生き様に触れることができます。そのお話すべてを記事にすることはできなくても、このようなお話を聞かせて頂くことで、その人への理解が深まり、文章全体も深まってくるでしょう。